2015年9月18日

9/11(金)ワンマンLIVE@渋谷O-nest。

終了致しました。沢山の方にご来場頂き、誠に有り難うございました。

当日LIVEは15分押しでスタート。1曲目でステージ上から沢山のお客様の姿を拝見して感激したと同時に、全身全霊で歌おうと再度決意しました。約2時間。お付き合い頂いたお客様には本当に有り難うございます。心から感謝であります。

自然と過去のキャリア、作品をなぞるようなライブになり、どう楽しんでもらうかを考えました。自分というパーソナルを語りつつも、それに留まらない、エンターテイメントに出来るよう。バンドさんの「ワンマン」とはまた違う、ソロラッパーが2時間歌う「ワンマン」の意味、その違いも改めて感じました。

今年は「ニューアルバムを発表してワンマンを開催する」までが目標でした。このワンマンまでが自分のニューアルバムリリース。ベストな形に。自分を納得させ、そして最高のLIVEでお客様にお見せせねばなりませんでした。

何ヶ月かの修練がこの2時間に全て集約されると考えると、短く感じるけれども長い時間。ワンマンLIVE。月並みですが全力で。完璧なライブにしようと思いました。

ライブ後、沢山のお客様とご挨拶させて頂き、自分のためにこの一晩、時間を空けてご来場頂いたという事実、遠方からお越し頂いた方もいらっしゃり、その事をより実感し「ワンマン」という物の重さを改めて受け止めました。

レーベルメイト「術ノ穴」のアーティストの皆は勿論、友人であるラッパーの皆や、イベントをご一緒した事のあるミュージシャンの皆さんにも、平日のお忙しい中ご来場頂けて本当に感激でした。

2時間バックDJとして後ろを構えて頂いたDJ Kuma the Sureshot。2時間のスムースな流れを産み出すのはこの方でなければ不可能でした。

オープニング、最高のDJでお客様を招き入れ、会場を暖めてくれたQUVIOKAL。

ゲストMCとして最高のラップ、最高のパフォーマンスをしてくれたハハノシキュウ。

そしてバンドセットで共演を快くOKして頂き、当日も素晴らしいリズムと演奏をして頂いた、テレフォンズ・松本誠治さんと長島涼平さん。

そしてステージ裏を全力で支えて頂いたFragment。

参加して頂いた誰一人欠けても、このワンマンは成立しませんでした。

当日のセットリストです。

DOTAMA『ニューワンマン』

1.HEAD
2.名曲の作り方
3.chessmusic
4.カリカチュア
5.誰も知らない
6.何言ってんの?
7.音楽ワルキューレ
8.音楽ワルキューレ2
9.通勤ソングに栄光を
10.好きな歌が街にあふれて
11.リストラクション
12.ウルトラMC
13.自宅ユニバース
14.栃木のラッパー
15.2012年にクリスマスが終わる
16.13月
17.reason
18.スイッチ
19.じいさんばあさんのうた
20.paradise bird
21.リクルート
22.要求
23.イオンモール
24.a song for a cup of tea
25.a letter from my heart
26.こんなぶっ壊れた国で

『ニューワンマン』。ご来場頂き、誠に有り難うございました。

ラッパーとしてアーティストとして。進化し、新しい事に挑戦出来るよう。より良いステージや楽曲、楽しんで頂ける物を産み出して行けるよう、これからも全力で精進して参ります。

DOTAMA

2015年9月6日

8月12日『ニューアルバム』というアルバムをリリースし、
9月11日に『ニューワンマン』というワンマンLIVEを開催するラッパー・DOTAMAです。

なぜニューアルバムが『ニューアルバム』なのか。
なぜワンマンが『NEW』なのか。
なぜ両タイトルに『NEW』という言葉がつくのか。

その因果関係をお話しすべく収録された楽曲の解説をする事でご説明したいと思います。ぜひお付き合い頂けたら幸いです。

3曲目『名曲の作り方』

全ての人の心に残る名曲の「作り方」があるとしたらそれはどんな「作り方」なのか。

今年1月、『音楽ワルキューレ2』が完成せずもんどり打っていたある日。友人であり大先輩である、DJ Kuma the Sureshot(kumathesureshot)の自宅でビートを聞かせてもらった。MPCで作られたそれはレゲエにも近い、とても高揚感のあるビートだった。その時何か閃いた気がした。

2010年に1st album収録の『音楽ワルキューレ』を制作していた当時も今の自分の生活感、リアルを維持しつつ、世に訴える、聞いて考えてもらえる楽曲を作ろうとしていた。ラブソングだったり、喜怒哀楽を歌って人の心を揺さぶるのも「名曲」なら、社会的なトピックを交え、聞き終わった後人に考えさせるのも「名曲」だと自分は思う。

特にラップは歌詞の情報量の多さから社会的なメッセージを持った歌詞の曲は海外でも日本でも沢山ある。黒人の人権問題を歌ったPublic Enemy、反戦思想を歌ったRage Against The Machine、風営法を歌ったYOU THE ROCK☆氏など。勿論、自分の感情を歌った「名曲」も社会的なメッセージを歌った「名曲」も、全て自分の言いたい事なので細かく区別してるアーティストはいないと思うが、個人的にはその二つになんとなく分けられると考えていた。

ミュージシャンだったら誰でも、決して滅びない傑作、人の心に残り続ける「名曲」を作ろうと目指す。自分もそうである。その「名曲」への到達ルートの違いであって、この曲ではそのルートである「作り方」を歌いたかった。

だがこの曲の一発目のリリックは『名曲の作り方知らない』である。聞いた人を100パーセント困惑させる出だしである。だがこれには理由がある。

この曲は『音楽ワルキューレ』を見つめ直す、1stアルバムを見つめ直した曲でもある。5年前、自分が傑作と信じて作った楽曲「音楽ワルキューレ」の続編を作る。それは過去の自分に対する挑戦であり、それを見つめ直す事そのものが続編なのではと考えたのである。なのでワルキューレ2のブログ(1716)でも書いたがこの曲が正式な続編であり、世に出ている『音楽ワルキューレ2』は自分の中では『音楽ワルキューレ3』なのである(ややこしくてすみません)。現にこの楽曲を作り終え、ワルキューレ2はすぐに完成した。この楽曲が今回のアルバム完成のカギになっている。

さらにこの曲にはこの時の『ワルキューレ2』を完成させられない苛立ち、思う事をそのまま落とし込もうと考えた。

世にリリースされているCDの帯やPOPで「最高傑作!」という謳い文句は良く見かける。もちろんスタッフさんやCDショップの店員さんが心から思ってそれは付けている。ただ自分自身、全力で作った過去の作品達を次のリリースで超えられるものなのか、という疑問があった。だがやらねばならない。

『音楽ワルキューレは最高なので遺作はあれにして下さい
って言えたら相当楽だよね でも歌い続ける明日もね』

このラインにはその気持ちを込めている。過去の作品(自分)に敬意を払いつつも、前に進む。自分がその都度「俺の最高傑作!」と思って作ったものをそう易々と超えられるのかという半信半疑な気持ちを込めつつも、常に更新し続けたい。そんなラッパーでありたいという感情を込めた。

『泣ける曲BEST マザ○ァッカー』

というリリックも書いた(汚い言葉ですみません)。どうしても感情を揺さぶらす曲のテーマはメランコリック、悲しさに寄りがちになる。ただ、それを皆が皆やっていたり、そのタイプの曲を作り続けていたら、それが例え名曲でも、表現者として同じ事の繰り返しになるのではとシビアに考えた。勿論自分もそういう曲は大好きだし、心を打たれる。ただこの曲では、その視点さえも一度突き放そうと考えた。

勿論その曲が「名曲」かどうかを判断するのはリスナー、お客様である。だが個人的に「名曲」に挑戦する事は「新しい事」をする事も含まれているとも思う。全ての人の心に残る「名曲」の作り方は知らないが、それでも挑戦する自分こそが名曲を作れる。『名曲の作り方』はそんなアティテュードを歌った楽曲です。

DOTAMA『ニューアルバム』

詳細:5456

2015年9月3日

8月12日『ニューアルバム』というアルバムをリリースし、
9月11日に『ニューワンマン』というワンマンLIVEを開催するラッパー・DOTAMAです。

なぜニューアルバムが『ニューアルバム』なのか。
なぜワンマンが『NEW』なのか。
なぜ両タイトルに『NEW』という言葉がつくのか。

その因果関係をお話しすべく収録された楽曲の解説をする事でご説明したいと思います。ぜひお付き合い頂けたら幸いです。

2曲目『音楽ワルキューレ2』

この曲の解説は8/10のMV公開時に書いたブログ「なぜ音楽不況の歌の続編を作ったのか」(1716)をご覧下さい。

・・で済ますのはあまりにも能がないので、ここで術ノ穴の主宰でありアーティストでもある、ビートメイカーユニット・Fragmentと自分が制作した少なくない楽曲の事をお話しさせて頂きます。

最初にFragmentと制作させて貰った楽曲は2005年に発売されたアルバム『walking in the soul』に収録された『developed love song』。自分は昔から、歌いたい事やテーマを別の何かに例えてラップする事が好きで、この時は『HIPHOP』というものを自分がお付き合いしている『女性』に例えて歌っています。当時は全力で書いて歌ったものの、メッセージ表現として伝わりづらさ、ラップスキルが自分が理想として描いていたものまで到達しておらず、今聞くと恥ずかしいですが、自分が2015年現在まで一貫している表現目標が既にこの時点で提示出来ていると自負出来ます。この時、MCバトルで名前を知ってもらい、EPを一枚出した程度のアーティストである自分に「曲を作ろう」と提案してくれたFragmentには本当に感謝です。

そしてここからFragmentとの楽曲制作の歴史が始まります。それは自分のレーベル・術ノ穴でのキャリアといっても過言ではありません。

時を経た2010年。自分の1stフルアルバムを制作する事になり、Fragmentと4曲楽曲を制作させて貰いました。それが以下の曲達です。

『音楽ワルキューレ』
『何言ってんの?』
『スイッチ』
『a song for a cup of tea』

アルバムタイトル曲「音楽ワルキューレ」は当時自分が海外のダークなダブステップビートに乗せたラップを聞いたFragmentが新たに制作したビートにラップを乗せ替えました。『音楽不況』というシリアスなトピックを暗めなビートでラップした自分に対し、今もFragmentの特徴である重く、固い、ダンサブルなドラムでありながら、ユーモアのある空気感でまとめて来て貰えて最高でした。

「何言ってんの?」はその2年前にリリースされた環ROY×Fragment『primal scream』のようなハードなドラムブレイクをよりシリアスにアレンジした雰囲気の楽曲で、とても大好きなビートです。テーマとして「コミュニケーション」を歌っています。

「スイッチ」もエクストリームな勢いのビートで、控えめに言ってもメチャメチャ格好良く。自分もそのテンションでラップしました。個人的に日本でこのタイプのHIPHOPビートを作らせたらFragmentの右に出るプロデューサーはいないと確信しています。これはその後『KREVA「挑め」-Fragment remix-』やFragment×空也MC『香車』としても進化して行ったと思います。

『a song for a cup of tea』は逆に静かなピアノとドラムだけの美しいトラック。ここで自分は一杯のお茶を飲み終わるまでに聞き終える、そんな短い時間で人の人生を変えれる、彩れるような曲を歌いたい、と歌っています。今もその気持ちは変わらず、ソロ1stアルバムの締めくくりにふさわしいビートを貰えて今でも感謝しています。

さらにその年はFragmentの『vital signs』に収録の『優しいおとな』という楽曲でもラップさせて頂き。ここではラッパー、キリコさんと「立派な大人」とは何かをラップしています。

ちなみにこれもFragmentと制作させて頂きました。今年5月のものです。

コンドームのCM曲です。インドのレディ博士(実在)という方が作ったコンドームなので、ビートもエスニック。楽しかったです。

今回のニューアルバムでも2曲、Fragmentのビートでラップしています。Fragmentとの楽曲制作で思った事は、ダンスミュージック的なハードさ、ダンサブルさを湛えながら、リリックを尊重するプロデューサーだという事です。快楽的に踊らせるダンスミュージックでありながら理性的な歌詞の強度を持った歌。一見成立させるのは非常に難しいですが、それは実は自分ラップスタイルにも通じていて、リリックを楽しんでもらいながら踊ってもらいたい、楽しんでもらいたい、という表現目標でもあります。その志、根底にある表現哲学は自分もFragmentも一緒だと思っています。

今回の『音楽ワルキューレ2』もそんな二つの特徴を持ち合わせた楽曲、二つの武器を持ったクラシックに仕上げられたと自信を持って言えます。

DOTAMA『ニューアルバム』

詳細:5456

2015年9月2日

NEW ALBUMのニューアルバム的解説①『HEAD』

8月12日『ニューアルバム』というアルバムをリリースし、
9月11日に『ニューワンマン』というワンマンLIVEを開催するラッパー・DOTAMAです。

なぜニューアルバムが『ニューアルバム』なのか。
なぜワンマンが『NEW』なのか。
なぜ両タイトルに『NEW』という言葉がつくのか。

その因果関係をお話しすべく、ワンマンまであと10日、収録された楽曲の解説をする事でご説明したいと思います。ぜひお付き合い頂けたら幸いです。

「アーティストが曲解説なんて!」と思いの方は飛ばして頂いて大丈夫です。ですが聞いた後に読んで頂けるだけでも非常に、非常に嬉しいですし、これを読む事でまだ自分の楽曲をお聴きになった事の無い方が興味を持って頂けたら幸いです。そして理解を深めて頂けたらこれ以上の喜びはありません。

いざ。

1曲目『HEAD』

今回のアルバムの1曲目。自己紹介の曲です。ラッパーにとって絶対必要な曲。ラッパーしかやれない、ラッパーが一番格好良く見えるジャンルの曲だとも思います。

アメブレイクさんでのインタビュー(005961.html)やTwitter(dotamatica)でも書かせて頂いた通り、5年前に1stアルバム『音楽ワルキューレ』をリリースさせて頂いて以降、MCバトルを中心に沢山の方が自分を知って頂いて本当に有り難かった反面、新しく自分を知って頂いた方に「自分が何者か」という楽曲を改めて作る必要性を感じていました。なので1曲目は自己紹介の曲に絶対しようと、アルバム制作当時から決めていました。

「セルフボースト」という言葉があります。HIPHOPを聞かない方には馴染みが無いかもしれませんが、ラッパーがする自己主張、つまり「俺はヤバイ!」「俺が最高!」「俺が時代を変えるラッパーだ!」という自分のラップスキル、能力を見せる事から他のラッパーとの差を見せたり、自分の存在をアピールするテーマの事です。

最初に書いた通りこの「セルフボースト曲」は、数ある音楽ジャンル、ミュージシャン区分けの中で「HIPHOP」というジャンルの「ラッパー」というミュージシャンでなければ出来ない、「ラッパー」こそが一番格好良くやれるのではと個人的に思います。

かつてアメリカのハードコアラッパーLL Cool Jが『Mama Said Knock You Out』という曲を歌いました。

これはLL Cool Jのおばあちゃん(お母さん)が「あんたはどんなラッパーにだって負けない!全員ぶちのめしちまいな!」と叱咤激励された経緯をそのままサビにしたという曲。俺はお前らより強い、格が違うんだ、というセルフボーストです。

またかつてSnoop Doggというラッパーが『WHO AM I(WHATS MY NAME)』という曲を作りました。自分の名前でサビを合唱する。これはやはりラッパーしか出来ないセルフボーストの曲だと思います。

LL Cool Jのように「表現」「トピック」でセルフボーストするラッパーもいれば、上記のような自分の「名前」をドカーンと持ってくる事でセルフボーストするラッパーもいます。『音楽ワルキューレ』に収録されている『ウルトラMC』はこのLL Cool Jタイプのセルフボースト曲でした。なので今回は自分の名前を歌にしよう、と思いました。

「HEAD」とは自分の「DOTAMA(ド頭)」の事です。ビートを制作してくれたのはQUVIOKAL(クビオカル)。彼は13年のハハノシキュウとのコラボアルバム『13月』からの盟友で、最高のビートメイカーです。

そしてフローに関してですがこれも挑戦しようと思った所があります。「フロー」とはラップの抑揚、ラップにオリジナリティをつけるものです。通常歌詞や文章をただ読み上げると棒読みになってしまいますが、リズミカルに歌う事で文章としての歌詞を音楽として、つまりラップとして認識させるエンジン部とも言えます。

自分は比較的特徴的なフロー、「ドタマだ!」と分かるラップをスキルフルに出来ると自負しております。ただ過去5枚アルバムを制作させてもらって来た過程である一種の型が出来ていた部分もあり、一度崩してみようと思いました。全力の全力で、1バースキック(ラップ)したら全体力を消耗する位の、エネルギーをぶちまけようと考えました。それがこの楽曲のフローです。

古今東西、頭文字に『ド』を持つラッパーは沢山いますが、自分、DOTAMAこそが最強の『ド』の持ち主だという宣言。この『HEAD』はそんなセルフボースト曲です。

DOTAMA『ニューアルバム』

詳細:5456

2015年8月11日

8月12日発売「ニューアルバム」から「音楽ワルキューレ2」のMVが公開されました。
 


 

この楽曲は5年前の自分の1stアルバム「音楽ワルキューレ」のアルバムタイトル曲の続編。ビートは5年前と同じフラグメント。映像制作はBABEL LABAL、監督はEPOCHの山地康太監督で、最高の映像に仕上げて頂けました。前作「音楽ワルキューレ」同様この「音楽ワルキューレ2」で歌っている事はずばり「音楽不況」です。

 

なぜ続編を作る気になったのか。

 

これだけSNSで明確なCD売上枚数や、LIVE動員、お客様の反応が分かる時代。2010年もそうだったが2015年、より誰しもが10年前や20年前より音楽産業が金額的に縮小気味だと分かる時代。なぜわざわざまた今『音楽不況』を歌う必要があったのか。

 

そもそも5年前1stアルバムを作っている時、何か世に訴える曲を作りたかった。無理に社会派ぶるわけでもなく、カツカツながらもインディーズで活動するミュージシャンの自分達が置かれている現状で直面する問題を歌にしたかった。そうすると自然と『音楽でメシを食えるか食えないか』という至極ありふれた、それでいて重要課題であるトピックに行き着いた。

 

当時自分がヨーロッパの既存のダブステップビートにリリックを乗せ、フラグメントがそれに共鳴、オリジナルビートを制作。そして音楽ワルキューレ、俗にいう「1」が完成した。

 

 

ぶっちゃけて言うと「1」は「我らミュージシャンは音楽不況と戦えるのか」という問題に答えを出せていなかった。2010年当時の自分を取り巻く環境、音楽シーンを鮮明に描写出来た自信は今聞いても絶対的にあるが「音楽に値札をつけたのは誰かのミスだった」というラストに象徴するように、これからより大きくなるであろう、シーンの金銭的縮小の波を表現しただけで、そこから先の「ではその音楽不況の中で我々はどう自分の表現を柔軟に、自由にやるのか」という答えにまでは辿り着いていなかった。

 

自分のLIVEをご覧になった事がある方はお分かりの通り、この「音楽ワルキューレ」をやる時は必ずラスト「・・というように音楽不況です!それでも我々は生き残ってます!やりたい事をやれてます!」と半ばやけくそのようなまとめ方をしていた。(実際「2」で歌っているように幸運にもカツカツでもやりたい表現をやりたいようにやれている事実があり、それをそのまま誇張も無くアウトロにしていた)

 

そして5年が経ち。自分は術ノ穴から4枚のコラボアルバムをリリースさせてもらい、その都度やりたい音楽活動をやれて来た。そして2014年、ついに自分のソロ名義の2ndアルバムを制作する事になった。その時フラグメントから提案があったのは「音楽ワルキューレ2を作らないか」という事だった。

 

正直に言う。最初猛反対した。「嫌だ」とさえ言った。

 

なぜなら最初に明記した通り、歌う必要が無いのである。2010年はまだそこまでツイッターやFacebookが定着しきっておらず(当時はミクシィ)、情報の共有スピードも今よりも遅いし、数字も今ほどは鮮明に見えていなかった。だが今や誰しもSNSで情報を収集し、告知や細かいトピックがあっという間に拡散される。現実的な販売枚数や具体的な数字、ツイッターのRT、Facebookのいいね!、現場での様子を撮影したInstagramを見る中で、よりそのアーティストの力、音楽シーンの規模が一般のリスナーさんにも明確に分かる。だから何を今更「音楽不況だー!」と叫ぶ必要があるのかと思ったのである。

 

自分もラッパーとして活動して10年。栃木の佐野という田舎(我が愛すべき故郷)から今は東京で活動させてもらっているが、何十年もやっている訳ではないのでインディーズシーンに詳しくなくても、「あの頃はこれだけ売れた」「〜年前はこんな熱があった」という昔話を聞かなくても、明らかに5年前より自分の音源販売枚数は減っていた。少しずつ上下はあったが、自分が20歳位の時に勝手に妄想していた「この位のキャリアの時はこの位売れてるだろうな〜」なんてイメージからもかけ離れていた。完全に自分の力不足である。現実を叩き付けられた。さらに周りに才能に恵まれながら商業的に恵まれない同業者もいて「音楽シーンは縮小している」と思い込んだ。昔は良かった、とかではない。リアルタイムに思った事である。

 

ガラガラの客席でLIVEをやるアーティスト。それは勿論そのアーティストの求心力にも左右されるが「金銭的な」音楽シーンは縮小していると思う。「いや、それは一部の話であって儲けてる所は儲けてるよ」と、勿論そうだが、youtube等の無料コンテンツ、そこに当たり前のようにアップロードされるハイクオリティの音楽。喫茶店のBGMのように、もう音楽にお金を払う必要はない。さらに、上京し、より速い音楽シーンに肉迫する中で痛烈に自覚した。「音楽不況と戦えるのか」という音楽ワルキューレで自らに問いかけ、そして答えを出せていないまま、「今、音楽不況と自分は戦えていない。やられっぱなしだ。」と。

 

そして1年制作に悩んだ。日々有り難い事にLIVEの忙しさもあったが、他のアルバム楽曲が次々に出来て行く中、一番最初に作り出した「音楽ワルキューレ2」はいつまで経っても完成しなかった。だがある日、その中で今回のアルバムの中に収録されている「名曲の作り方」という楽曲を制作した。その楽曲は「俺の1stは名作だ」というラッパー特有のセルフボースト(自己賛美)曲である。ラッパーにしか出来ないと言えるジャンルの曲である。そこで吹っ切れた。過去の自分の作品「音楽ワルキューレ」というアルバムを肯定する事。それが自分の中での「音楽ワルキューレ2」なのである。

 

なのでややこしいのだが今youtubeで上がっているMV曲「音楽ワルキューレ2」は厳密に言えば「3」なのである。タイトル曲も含め「音楽ワルキューレ」を肯定し、自分のスタイルを改めて自己肯定出来た。そして活路が見出せたのである。

 

折しも2012年末に上京して2年。東京という人の密集した、勿論ミュージシャンも栃木より多い場所で様々なアーティストさんと現場でご一緒させてもらったり、5年前よりSNSをより個人的にも使うようになり、現場でもネットでも日々カッコイイアーティストはわんさか聞けていた。毎日大量の新鮮な楽曲、アイディアがUPされたり、ライブで見れたり、フィジカルな売上を別にすれば、今の音楽シーンは最高なのである。確かにアーティストは沢山いて飽和しているように感じる。だがそれは逆を言えば、最高の人材が揃っている、音楽を楽しむ人には夢のようなアミューズメントパークなのである。

 

何を悩む事があるのかと思った。
 

それに自分の活動、存在も5年も経過すると、本当に少しずつだが人に知ってもらえるようになっていた。メジャーでないアーティスト、しかもソロラッパー。世間で言えばあまりにも「ラッパー」からかけ離れた見た目。歌唱スタイル。それでも、メディアに出させて頂いたりして、少しずつ、5年前より自分の名を知ってもらえるようになっていたのである。

 

そこで気付いた。5年前自分に突きつけた「音楽不況と戦えるのか」という問題。そこに答えを出せず、のらりくらり5年活動して来た中で、自分のやりたい事は完璧にやれてきたではないかと。やりたいアーティストさんと楽曲を作らせてもらったり、一緒に出たいアーティストさんと共演させてもらったり。日々カツカツではあるが、「音楽不況」の中、自由にアーティスト活動をし、自分の表現も少しずつだがスキルアップ、進化して来たのである。

 

もう迷う事は無かった。そのありのままを「音楽ワルキューレ2」にしようと考えた。音楽業界の女神=音楽ワルキューレ。自分は5年前にそれをリリックにした時点で召還したが、したきりで何も彼女にアンサーをしていなかった。それが今回の楽曲のラストのリリックである。

 

「我ら(ミュージシャン)の進化は止まらない」
 

「音楽は終わらない」

 

今回、ミュージックビデオで音楽の女神=ワルキューレを演じて頂いたのはモデルのきなりさん(MICHELLE ENTERTAINMENT)。プロデューサーの山田さん、BABEL LABELさん、山地監督、EPOCHさん。スタッフの皆様に本当に感謝です。フラグメントと自分の楽曲を最高の形で映像化して頂けたと確信しています。

 

8月12日「ニューアルバム」発売です。最高の作品に仕上げられたと絶対的な自負があります。日常的に音楽を聴く方は勿論、そうでない方、同業者、全ての人に聞いてもらえる事を心より願っています。

 

DOTAMA