DOTAMA – 音楽ワルキューレ2

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8月12日発売「ニューアルバム」から「音楽ワルキューレ2」のMVが公開されました。
 


 

この楽曲は5年前の自分の1stアルバム「音楽ワルキューレ」のアルバムタイトル曲の続編。ビートは5年前と同じフラグメント。映像制作はBABEL LABAL、監督はEPOCHの山地康太監督で、最高の映像に仕上げて頂けました。前作「音楽ワルキューレ」同様この「音楽ワルキューレ2」で歌っている事はずばり「音楽不況」です。

 

なぜ続編を作る気になったのか。

 

これだけSNSで明確なCD売上枚数や、LIVE動員、お客様の反応が分かる時代。2010年もそうだったが2015年、より誰しもが10年前や20年前より音楽産業が金額的に縮小気味だと分かる時代。なぜわざわざまた今『音楽不況』を歌う必要があったのか。

 

そもそも5年前1stアルバムを作っている時、何か世に訴える曲を作りたかった。無理に社会派ぶるわけでもなく、カツカツながらもインディーズで活動するミュージシャンの自分達が置かれている現状で直面する問題を歌にしたかった。そうすると自然と『音楽でメシを食えるか食えないか』という至極ありふれた、それでいて重要課題であるトピックに行き着いた。

 

当時自分がヨーロッパの既存のダブステップビートにリリックを乗せ、フラグメントがそれに共鳴、オリジナルビートを制作。そして音楽ワルキューレ、俗にいう「1」が完成した。

 

 

ぶっちゃけて言うと「1」は「我らミュージシャンは音楽不況と戦えるのか」という問題に答えを出せていなかった。2010年当時の自分を取り巻く環境、音楽シーンを鮮明に描写出来た自信は今聞いても絶対的にあるが「音楽に値札をつけたのは誰かのミスだった」というラストに象徴するように、これからより大きくなるであろう、シーンの金銭的縮小の波を表現しただけで、そこから先の「ではその音楽不況の中で我々はどう自分の表現を柔軟に、自由にやるのか」という答えにまでは辿り着いていなかった。

 

自分のLIVEをご覧になった事がある方はお分かりの通り、この「音楽ワルキューレ」をやる時は必ずラスト「・・というように音楽不況です!それでも我々は生き残ってます!やりたい事をやれてます!」と半ばやけくそのようなまとめ方をしていた。(実際「2」で歌っているように幸運にもカツカツでもやりたい表現をやりたいようにやれている事実があり、それをそのまま誇張も無くアウトロにしていた)

 

そして5年が経ち。自分は術ノ穴から4枚のコラボアルバムをリリースさせてもらい、その都度やりたい音楽活動をやれて来た。そして2014年、ついに自分のソロ名義の2ndアルバムを制作する事になった。その時フラグメントから提案があったのは「音楽ワルキューレ2を作らないか」という事だった。

 

正直に言う。最初猛反対した。「嫌だ」とさえ言った。

 

なぜなら最初に明記した通り、歌う必要が無いのである。2010年はまだそこまでツイッターやFacebookが定着しきっておらず(当時はミクシィ)、情報の共有スピードも今よりも遅いし、数字も今ほどは鮮明に見えていなかった。だが今や誰しもSNSで情報を収集し、告知や細かいトピックがあっという間に拡散される。現実的な販売枚数や具体的な数字、ツイッターのRT、Facebookのいいね!、現場での様子を撮影したInstagramを見る中で、よりそのアーティストの力、音楽シーンの規模が一般のリスナーさんにも明確に分かる。だから何を今更「音楽不況だー!」と叫ぶ必要があるのかと思ったのである。

 

自分もラッパーとして活動して10年。栃木の佐野という田舎(我が愛すべき故郷)から今は東京で活動させてもらっているが、何十年もやっている訳ではないのでインディーズシーンに詳しくなくても、「あの頃はこれだけ売れた」「〜年前はこんな熱があった」という昔話を聞かなくても、明らかに5年前より自分の音源販売枚数は減っていた。少しずつ上下はあったが、自分が20歳位の時に勝手に妄想していた「この位のキャリアの時はこの位売れてるだろうな〜」なんてイメージからもかけ離れていた。完全に自分の力不足である。現実を叩き付けられた。さらに周りに才能に恵まれながら商業的に恵まれない同業者もいて「音楽シーンは縮小している」と思い込んだ。昔は良かった、とかではない。リアルタイムに思った事である。

 

ガラガラの客席でLIVEをやるアーティスト。それは勿論そのアーティストの求心力にも左右されるが「金銭的な」音楽シーンは縮小していると思う。「いや、それは一部の話であって儲けてる所は儲けてるよ」と、勿論そうだが、youtube等の無料コンテンツ、そこに当たり前のようにアップロードされるハイクオリティの音楽。喫茶店のBGMのように、もう音楽にお金を払う必要はない。さらに、上京し、より速い音楽シーンに肉迫する中で痛烈に自覚した。「音楽不況と戦えるのか」という音楽ワルキューレで自らに問いかけ、そして答えを出せていないまま、「今、音楽不況と自分は戦えていない。やられっぱなしだ。」と。

 

そして1年制作に悩んだ。日々有り難い事にLIVEの忙しさもあったが、他のアルバム楽曲が次々に出来て行く中、一番最初に作り出した「音楽ワルキューレ2」はいつまで経っても完成しなかった。だがある日、その中で今回のアルバムの中に収録されている「名曲の作り方」という楽曲を制作した。その楽曲は「俺の1stは名作だ」というラッパー特有のセルフボースト(自己賛美)曲である。ラッパーにしか出来ないと言えるジャンルの曲である。そこで吹っ切れた。過去の自分の作品「音楽ワルキューレ」というアルバムを肯定する事。それが自分の中での「音楽ワルキューレ2」なのである。

 

なのでややこしいのだが今youtubeで上がっているMV曲「音楽ワルキューレ2」は厳密に言えば「3」なのである。タイトル曲も含め「音楽ワルキューレ」を肯定し、自分のスタイルを改めて自己肯定出来た。そして活路が見出せたのである。

 

折しも2012年末に上京して2年。東京という人の密集した、勿論ミュージシャンも栃木より多い場所で様々なアーティストさんと現場でご一緒させてもらったり、5年前よりSNSをより個人的にも使うようになり、現場でもネットでも日々カッコイイアーティストはわんさか聞けていた。毎日大量の新鮮な楽曲、アイディアがUPされたり、ライブで見れたり、フィジカルな売上を別にすれば、今の音楽シーンは最高なのである。確かにアーティストは沢山いて飽和しているように感じる。だがそれは逆を言えば、最高の人材が揃っている、音楽を楽しむ人には夢のようなアミューズメントパークなのである。

 

何を悩む事があるのかと思った。
 

それに自分の活動、存在も5年も経過すると、本当に少しずつだが人に知ってもらえるようになっていた。メジャーでないアーティスト、しかもソロラッパー。世間で言えばあまりにも「ラッパー」からかけ離れた見た目。歌唱スタイル。それでも、メディアに出させて頂いたりして、少しずつ、5年前より自分の名を知ってもらえるようになっていたのである。

 

そこで気付いた。5年前自分に突きつけた「音楽不況と戦えるのか」という問題。そこに答えを出せず、のらりくらり5年活動して来た中で、自分のやりたい事は完璧にやれてきたではないかと。やりたいアーティストさんと楽曲を作らせてもらったり、一緒に出たいアーティストさんと共演させてもらったり。日々カツカツではあるが、「音楽不況」の中、自由にアーティスト活動をし、自分の表現も少しずつだがスキルアップ、進化して来たのである。

 

もう迷う事は無かった。そのありのままを「音楽ワルキューレ2」にしようと考えた。音楽業界の女神=音楽ワルキューレ。自分は5年前にそれをリリックにした時点で召還したが、したきりで何も彼女にアンサーをしていなかった。それが今回の楽曲のラストのリリックである。

 

「我ら(ミュージシャン)の進化は止まらない」
 

「音楽は終わらない」

 

今回、ミュージックビデオで音楽の女神=ワルキューレを演じて頂いたのはモデルのきなりさん(MICHELLE ENTERTAINMENT)。プロデューサーの山田さん、BABEL LABELさん、山地監督、EPOCHさん。スタッフの皆様に本当に感謝です。フラグメントと自分の楽曲を最高の形で映像化して頂けたと確信しています。

 

8月12日「ニューアルバム」発売です。最高の作品に仕上げられたと絶対的な自負があります。日常的に音楽を聴く方は勿論、そうでない方、同業者、全ての人に聞いてもらえる事を心より願っています。

 

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