NEW ALBUMのニューアルバム的解説③『名曲の作り方』

カテゴリー: DOTAMA

8月12日『ニューアルバム』というアルバムをリリースし、
9月11日に『ニューワンマン』というワンマンLIVEを開催するラッパー・DOTAMAです。

なぜニューアルバムが『ニューアルバム』なのか。
なぜワンマンが『NEW』なのか。
なぜ両タイトルに『NEW』という言葉がつくのか。

その因果関係をお話しすべく収録された楽曲の解説をする事でご説明したいと思います。ぜひお付き合い頂けたら幸いです。

3曲目『名曲の作り方』

全ての人の心に残る名曲の「作り方」があるとしたらそれはどんな「作り方」なのか。

今年1月、『音楽ワルキューレ2』が完成せずもんどり打っていたある日。友人であり大先輩である、DJ Kuma the Sureshot(kumathesureshot)の自宅でビートを聞かせてもらった。MPCで作られたそれはレゲエにも近い、とても高揚感のあるビートだった。その時何か閃いた気がした。

2010年に1st album収録の『音楽ワルキューレ』を制作していた当時も今の自分の生活感、リアルを維持しつつ、世に訴える、聞いて考えてもらえる楽曲を作ろうとしていた。ラブソングだったり、喜怒哀楽を歌って人の心を揺さぶるのも「名曲」なら、社会的なトピックを交え、聞き終わった後人に考えさせるのも「名曲」だと自分は思う。

特にラップは歌詞の情報量の多さから社会的なメッセージを持った歌詞の曲は海外でも日本でも沢山ある。黒人の人権問題を歌ったPublic Enemy、反戦思想を歌ったRage Against The Machine、風営法を歌ったYOU THE ROCK☆氏など。勿論、自分の感情を歌った「名曲」も社会的なメッセージを歌った「名曲」も、全て自分の言いたい事なので細かく区別してるアーティストはいないと思うが、個人的にはその二つになんとなく分けられると考えていた。

ミュージシャンだったら誰でも、決して滅びない傑作、人の心に残り続ける「名曲」を作ろうと目指す。自分もそうである。その「名曲」への到達ルートの違いであって、この曲ではそのルートである「作り方」を歌いたかった。

だがこの曲の一発目のリリックは『名曲の作り方知らない』である。聞いた人を100パーセント困惑させる出だしである。だがこれには理由がある。

この曲は『音楽ワルキューレ』を見つめ直す、1stアルバムを見つめ直した曲でもある。5年前、自分が傑作と信じて作った楽曲「音楽ワルキューレ」の続編を作る。それは過去の自分に対する挑戦であり、それを見つめ直す事そのものが続編なのではと考えたのである。なのでワルキューレ2のブログ(1716)でも書いたがこの曲が正式な続編であり、世に出ている『音楽ワルキューレ2』は自分の中では『音楽ワルキューレ3』なのである(ややこしくてすみません)。現にこの楽曲を作り終え、ワルキューレ2はすぐに完成した。この楽曲が今回のアルバム完成のカギになっている。

さらにこの曲にはこの時の『ワルキューレ2』を完成させられない苛立ち、思う事をそのまま落とし込もうと考えた。

世にリリースされているCDの帯やPOPで「最高傑作!」という謳い文句は良く見かける。もちろんスタッフさんやCDショップの店員さんが心から思ってそれは付けている。ただ自分自身、全力で作った過去の作品達を次のリリースで超えられるものなのか、という疑問があった。だがやらねばならない。

『音楽ワルキューレは最高なので遺作はあれにして下さい
って言えたら相当楽だよね でも歌い続ける明日もね』

このラインにはその気持ちを込めている。過去の作品(自分)に敬意を払いつつも、前に進む。自分がその都度「俺の最高傑作!」と思って作ったものをそう易々と超えられるのかという半信半疑な気持ちを込めつつも、常に更新し続けたい。そんなラッパーでありたいという感情を込めた。

『泣ける曲BEST マザ○ァッカー』

というリリックも書いた(汚い言葉ですみません)。どうしても感情を揺さぶらす曲のテーマはメランコリック、悲しさに寄りがちになる。ただ、それを皆が皆やっていたり、そのタイプの曲を作り続けていたら、それが例え名曲でも、表現者として同じ事の繰り返しになるのではとシビアに考えた。勿論自分もそういう曲は大好きだし、心を打たれる。ただこの曲では、その視点さえも一度突き放そうと考えた。

勿論その曲が「名曲」かどうかを判断するのはリスナー、お客様である。だが個人的に「名曲」に挑戦する事は「新しい事」をする事も含まれているとも思う。全ての人の心に残る「名曲」の作り方は知らないが、それでも挑戦する自分こそが名曲を作れる。『名曲の作り方』はそんなアティテュードを歌った楽曲です。

DOTAMA『ニューアルバム』

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